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​私たちが課題と考える5つのこと

 私たちは、現在の日本の社会におけるDVや虐待などによる生きづらさを抱える方、トラウマ関連障害による生きづらさを抱える方たちへの支援において、そして離脱後の支援についての課題として、以下の5点があると考えます。

 

一、DVや虐待の分野と精神科医療や看護・福祉・障害等の分野がつながっていない

 DVや虐待の分野と精神科医療や看護・福祉・障害等の分野は、本来、緊密な連携が必要かつ、それぞれの分野についてある一定の理解が必要であるが、実際にはそれぞれの分野の連携が上手く機能しておらず、まだまだ必要かつ有効なサポートができていない現状があります。ときには支援を届けることすらできていない場合もあり、結果的にさらなるDVや虐待が起こっていると考えます。そのような負のサイクルを断ち切るには、各分野が密に連携をとり、それぞれの専門的知見をもって支援にあたることが必須であると考えます。

 

二、今のDV支援施策は、当事者のニーズに応えきれていない

 DVから離脱していく過程では、「離れたい」と思う、そして「離れる」という決断をし、それを実行するまでには、時間も体力も気力も必要であり、継続した支援が必要です。実行したとしても、またもとに戻ってしまうということは、支配―被支配の関係においては当然のことです。その過程の中で「今日一日だけ」「今日の数時間だけ」「一人だけの空間に居たい」そんなニーズはとても多いのですが、現在の公的なシェルターは、「逃げる覚悟」ができているかどうかを問われるため、「今だけ」という方に対して、頼れる先があるのであればそこに行くように、もしくは、お金があるのであればホテルに、という助言しかできないのが現状です。特に経済的・社会的DVを受けている方にとっては、何の選択肢もありません。たとえどこかのホテルに一人で過ごせたとしても、不安や恐怖と戦い、孤独を感じながら過ごすことは、本当の意味での「休息」にはなりません。そういった人たちの行く先として、そこに行けば情報がそろっていて、何も言わなくても何となくわかってくれる場があれば、そこで少し心身を休めることができ、時には自分自身を客観視することにもつながります。そうして少しずつ支援につながり、ひいては離脱につながる道筋があることが、まだ渦中にいる人にとって必要なことなのですが、まだそういった場が無いのが現状です。

 

三、専門性の問題 

 各都道府県で配置されている婦人相談員に関しては、専門性が統一されず、一婦人相談員の力量がまちまちです。二次被害を生み出していることも多々あり、専門家としての資質に疑問を感じる場面があります。結果的に当事者が支援につながることをあきらめてしまうケースさえある中、専門性はもちろんのこと、支援の質を高め、担保していくことが緊急の課題であると考えます。

 

四、「トラウマ」という視点の必要性

 支援を必要とされている方たちは、DVや虐待などによる「トラウマ」による生きづらさを抱えています。特に支援者は「トラウマ」を前提とした視点を持って「安心・安全」な場の提供と関係性を構築することが何よりも必要なことなのですが、そのような視点がまだまだ周知・理解されていない現状があります。また、司法、医療、福祉等々、関係機関のすべてにおいて、「トラウマ」を理解した上での対応が求められるのですが、未だにその理解のなさから二次被害を生み出し、当事者は二重三重の苦しみを抱えなければならず、支援者への不信感を募らせ、孤立してしまう、というケースがあとを絶たない現状があります。

 

五、離脱後の支援の必要性

 DVや虐待等から逃れた後、当事者は大なり小なりトラウマによる身体的・精神的症状を抱えながら、新たな土地で新たに生活を再建していかざるを得ません。そうした離脱後の継続的な支援の必要性は明白ではあるものの、未だ、そのような支援はほぼ無いのが現状です。

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